銭湯いこにVol.25「銭湯の壁を塗れ!(伊賀池澤湯)」後篇

投稿日: 2012年10月31日(水)18:00

photo:写真師マツバラ(松原豊) txt:サルシカ隊長(奥田裕久)

伊賀の池澤湯。
その外壁に、番組視聴者とサルシカ隊で野菜と富士山を画を描くことになった。
銭湯の息子が親父のあとを継ぐにあたり、地域に貢献していく銭湯になるための決意表明であった。

なんとも光栄な依頼であるが、ワレワレ、サルシカ隊銭湯企画部の面々には、絵心や色彩センス、金も地位も名誉も信頼も信用もいっさいないのだ(笑)。
そこでプロのイラストレーターで、最近サルシカで「1コマな毎日」も連載してもらっているシャンティーさんを、志摩から伊賀へなかば強制連行したのであった。

プロによって下絵はほどこされたが、白い壁になかなかペンキを入れることができない。
染弥さんとワタクシは、いつまでも前フリのレポートを続け、他の面々は所在なさげにただただ立っているのであった。

その沈黙を破り、一気に筆を入れたのは、サルシカ銭湯企画の勇者ボーノー隊員であった。
いきなりトマトの赤!
しかもいきなりペンキがたれる!!!

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」

そこにいた全員が叫び声をあげた。
こうして戦いははじまったのだ。

ボーノーさんの失敗でみんな気が楽になったせいか、そのあとは順調に筆が進んだ。
シャンティーさんの下絵にそって、みんな色を入れていく。
壁に水平に走るパイプを植物の茎に見立てて緑に塗る。
そこから葉を伸ばした。
これで一気にいい感じになった。

写真左上:視聴者参加の「ケンちゃんラーメン」さん。なんとケロリンと同じ職場だった
写真左下:「ここは赤色でええのぉ?」と叫んでいるスズキックス
写真右上:プロの塗装屋さんのアドバイスを聞く染弥さんと隊長
写真右下:不安げに様子を見守る池澤湯のご主人とおかあさん。

この池澤湯のおとうさんとおかあさんの不安げな表情は、ワレワレを思い切り緊張させた。
いくら息子が決めたこととはいえ、自分が何十年にもわたって守ってきた銭湯の壁に野菜の画を描くのである。
しかもこんな騒がしい素人集団に。
心配するな、という方が無理である。

一応テレビなので、この時の気持ちをおとうさんに聞いた。

「息子にまかせたことやから、オレは口を出さん。
 いろいろ言いたいことはあるけど、もう出さん。
 みんなに喜んでもらえる銭湯になったら、それでええ・・・」

みたいなことを言っていた。
そうなのだ!
これは父と息子の物語の一部なのだ。
真剣勝負なのだ!!!

写真左上:お昼はみんなでコンビニのお弁当!
写真左下:予定より遅れているので写真師マツバラもお手伝い!
写真右上:銭湯の息子さん差し入れのソフトクリームでひとやすみ!
写真右下:写真師が失敗した画をシャンティーさんが修正。まったくもう!!

池澤湯はこの日も営業。
毎日通ってくるお客さんのためにも休むことはできない。
開業時間の午後3時までにはすべての作業を終えているつもりであったが、おかあさんが暖簾を出し、お客さんがやってきても終わらなかった。
せめて明るいうちに終わらないと大変なことになる・・・・。
筆を持つ面々は焦る。
番組のスタッフも焦る。
ワタクシも焦る。

ワタクシも染弥さんもテレビの撮影のことなんかそっちのけで描くことに集中。
しゃべらない落語家とコメンテーターなのだ(笑)。

ついに番組スタッフのタナケンや、ディレクターのタチカワDまで参戦!
ただひたすらに描く!
描く描く!!

そして4時過ぎ・・・・。
なんとか終わりが見えてきた。

最後の一筆は、やはりこの人にお願いしないといけない。

おとうさんは白いペンキをワリバシの先にちょんちょんとつけて少し震える手で描いた。
そう、
ここでもやはり3羽のカモメであった。
おとうさんのこだわり・・・。
そして銭湯を託す息子への、愛情のこもったメッセージ。

こうして池澤湯の壁画は完成したのだ。

ご覧あれ。
おお、なんてことでしょう!!

伊賀の隠れ湯が、まるでイタリアンレストランのような装いに!
が、手前の富士山がしっかりと銭湯を主張しています。
ひまわりは池澤家のみなさんの明るさを!
そして色とりどりの野菜たちは地域への思いを表現!!

ワレワレのアツイ6時間が終わった。

「せめて風呂に入って汗を流してください! 疲れだけでも落としてください!」

という息子さんの好意で、みんなでひとっ風呂!!
全身の疲れが湯気と共に抜けていき、充実感だけが身体と心に残る。

よしよし。
みんな笑顔でうなずきあった。

その頃、写真師マツバラは外でひとり写真を撮っていた。
池澤湯にやってくるお客さん全員が、その壁を彩る画に足を停め、感嘆の声をあげていたという。

「あれあれ、こんなかわいい絵を描いてもろてぇ」

それはまるでかわいい服を着せてもらった孫を見るようだったという。
写真師は涙がこぼれそうだったとあとで話していた。

そして振り返ると、おとうさんと息子の満面の笑みがあった。
もう言葉はいらないのだ。

最後にワレワレは、小さな扉に名前を残させてもらった。

銭湯は地域の小さなコミュニティセンターである。
石鹸箱をカタコト鳴らし、ひとっ風呂浴びて、近所の人と語り合い、笑い合い、時に赤ちょうちんをくぐる。
この小さなつながりから、ワレワレははじめるのだ。

池澤湯
TEL:0595-21-4606
定休日:水曜日
営業時間 : 15:00~21:00
料金:
大人(中学生以上 12才以上) 350円
中人(小学生 6才以上) 150円
小人(乳幼児 6才未満) 70円

〈おまけ〉

さて、ここで研修生2名のレポートをここに掲載するのだ。
参加者からみたサルシカの活動をお楽しみあれ!!(笑)


はじめまして。片山です。
9月11日に銭湯の壁に絵を描きにちょっと伊賀に行ってきましたに。

「うっほほっほほ~いっ!」って心から楽しんでそうな、素敵なおっさんたちにまぎれてめったに出来やんおもしろい体験をしてきました。

職場の同僚、スズキックスから事前情報を仕入れ、仕事中、半ば娯楽的に「銭湯いこに!」ブログを読んでニタニタしながら当日のイメージを頭に描き、やってきましたに伊賀市の池澤湯さんに!

現地に着いてビックリ。「えぇっ・・・私もテレビに出るんかい!」とまどいつつも「頑張るぞ。オー!」とこぶしを振りかざして雄たけびをあげてみたり、「壁にはひまわりを描きたい」と冷静にアイデアを披露してみたり、ちゃっかりと撮影に参加。

しかーし!刷毛を握りしめた瞬間からもう今までの私ではないっ!心を静め、無心で壁に色をのせていく。刷毛づかいでペンキを少しかすらせ、割り箸を使って葉っぱの葉脈に命を吹き込む。いくらまうしろでテレビカメラのおっさんが「はぁ。はぁ。はぁ。」と荒い吐息をかけてきても全然気にしないもんね。

何もなかった銭湯の外壁が今や芸術作品に変わっている。にんじんの色リアルッッッ!かぼちゃ、ピーマンっぽいけど立体的やないかいっ!!おおおおお!!なんなんやこの芸術的な大根はぁ!!!人間以外のものにフォール・イン・ラブしちゃいそうだぞ!自分も含め、今日初めてサルシカ銭湯企画に参加する人もいるのにこのまとまりよう。・・・なんなんだ。

興奮と感動とともに、最後の仕上げで釜じいがカモメに尾っぽを描く。割り箸で。つぅですな~。

そしてご褒美は池澤湯さんのお風呂。・・・実は銭湯ってあんまり行ったことない。でも気づいてました。開店してから何人ものおばーちゃん、おじーちゃん、それに近所の子どもたちが銭湯に入りに来ていることに。ここの人たちにとっては日常の一コマ。それは晩酌前のひとときであったり、夕飯支度前のゆったりできる時間であったり、学校帰りの一風呂であったり。60年ものあいだそうやってみんなに寄り添い続けてきたのだろうか。今日からはまたちょっと違う雰囲気を醸し出したみんなの湯。そんなお湯にありがた~く入らせてもらうのだー!
「男湯に・・・混ぜてもらってもいいですか?」

なんて言えるはずもなく、壁を隔てて聞こえてくる実に楽しそうな男性陣の声。私は女湯で一人黙々と今日一日の疲れを落とす。あったかいお湯や昔懐かしい浴室内のタイルから昔入ったばーちゃんちの五右衛門風呂を思い出したりなんかして・・・。

池澤湯さんに新たな命を吹き込んだサルシカ隊。今度は友だちを連れてここに来よう。ランチを食べて夕方銭湯でお湯につかる。一回20円ですこぶるよく乾くけど、髪の毛全部右側に傾くあのドーム型ドライヤーで髪を乾かし、火照った体に冷たい飲み物を流し込む。そんな遊び方、いいかもしれない!そうだ、そうしよう!そんな思いを胸に、池澤湯さんを後にしたのでした。


みなさんはじめまして!
津市NPOサポートセンタースタッフの黒石匡晃と申します。
本日は、かねてより楽しみにしていたサルシカ銭湯企画に参加してきました。
これはもう自分の人生のかけがえのない1ページとなりました。(どこかで聞いたような…)
なぜなら私もサルシカの活動に参加し、サルシカ隊のメンバーとなったのですから。

さてさて、この日津市NPOサポートセンターからはスズキックスさん、片山さん、私黒石の3名が参加。
しかし、今回の企画について実は詳しい内容はほとんど聞いておりませんでした。
「壁に絵を描くからペンキと刷毛だけ持って来い!あとは汚れてもいい服で!
とのことです。
そんな不安と楽しみも両方満載した私たちの車は、伊賀市上野にある池澤湯さんについに到着!
今日お世話になるサルシカ隊長奥田さん、落語家の林家染弥さん、写真家の松原さん、三重テレビ放送局さん、イラストレーターのシャンティーさんにごあいさつし、今回絵のキャンパスとなる池澤湯さんへおじゃましました。

早速、これからどんなテーマで絵を描いていくのか、ご主人の池澤さん、シャンティさんを中心に円陣を組み活発な意見を交わしました。そこで、絵のテーマとして池澤さんから『元気が出るような絵』を描いてほしいとのビッグテーマを頂き、私たちもこれに対し、知恵を絞りシャンティさんを中心に話し合われ、「富士山」「野菜」「笑顔」「太陽」「ひまわり」が描かれることになりました!

イメージが出来たことでみんな興奮状態となり、下書きが書かれた壁に、様々な想いを込めて筆を振るった。
書き始めたら早いもので、次々に作品が描かれていきました。
それにしても「ちょっと、みんなホントは絵のデザインのプロなんじゃないの?」はじめは、「私なんかが人様の壁に絵を描くなんて罰が当たりますよ…
なんて言っていたのは誰だ!何、何、もう…みんなこんな才能を密かに隠し持っていたりして、この野郎っ。と、私はみんなのやり方を見よう見真似で盗みながらきゅうりを描いてみました。技術は盗め!ですよ!

あっ、という間に壁には「太陽」「富士山」「野菜」「ひまわり」が描かれ、銭湯というよりちょっとおしゃれなCAFÉのように様変わり!!やった!完成!
初対面のメンバーの集まりとは思えないほどの、本当にまとまりのある一つの絵として仕上がりました。
このような、出来上がりになる事を誰が想像出来たでしょうか?

これからもこの壁画と共に、より地域の方に愛される銭湯であり続けて頂けたらと願っています。
いや~ホント無事完成してホッとしましたよ。作業の後皆さんと一緒に入ったおふろは格別に気持ちよかったです。
みなさん本当にお世話になりました。
池澤湯さんは味のある銭湯ですし、この壁画も見に来て下さい。